エッセイ

エッセイ

タイトルが好きな本

タイトルだけで人を魅了する本というのがある。 独特な世界観を表していたり、単純に格好良かったり、音が気持ちよくて思わず読み上げたくなったりする本のタイトル——例えば、フィリップ・K・ディックの『電気羊はアンドロイドの夢を見るか』は有名であり...
エッセイ

【勘違いの指向性】好きなものに過敏すぎて空耳・空目が絶えない話

朝、会社のエレベーターで乗り合わせた同僚が眠そうに言った。 「昨晩、本を読み始めたら面白くて止められなくて……興奮して眠れなくなっちゃった」 「あらー。読んでる時は幸せだけど、翌朝後悔しますよね」 「本当に。夜の読書は気を付けないと」 辛そ...
エッセイ

【紙の本が好きな理由】貸し借りのコミュニケーション

物の貸し借りというのは、年々減っていく。 レンタルビデオ屋は減り、サブスクで配信を見るようになった。貸本屋はなくなり、電子書籍が普及した。大体のものがデジタル化され、物を所持しなくてもサブスクで事足りる。 私は一人暮らしだというのもあって、...
エッセイ

格好つけない人生は楽しい

仲のいい同僚と忘年会をした。 朝から買い出しをして、みんなで買いすぎて食べすぎて飲みすぎるための会だ。 チキンを頬張り、シャンメリーをあけ、ケーキを切り、寿司を食べ、みかんを剥き、昼間からお酒を飲む。クリスマスと正月休みを一つの鍋で煮込んだ...
エッセイ

いつだって必要とされるのは「体系だっていて整合性のあるそれっぽい物語」

会話中の「自分ってこんなこと考えてたんだ」 誰かと話していて、つらつらと自分の意見を述べていると、ふと「自分ってこんなこと考えてたんだ」と思うことがある。 自分の口からまろび出た考えだというのに、まるで人ごとのような感想をもつ。その後、逆輸...
エッセイ

【気になる新刊】新刊を積読して読みたい時に読むすすめ

流行が苦手な理由 私は、流行を追いかけるのが苦手だ。 人気のドラマも、話題の映画も、流行りの服も、SNSで特定のコンテンツの最新情報をリアルタイムで追うことも、とかく避けがちだ。 コンテンツの好き嫌いは関係ない。大好きな本でもそうだからだ。...
エッセイ

【まるで有識者】存在しないゲームの提案

以前、年下の友人に『はぁっていうゲーム』をもらった。 一度やったことがあるが、面白いゲームだ。大人数でするほど面白い。演技派になれた気になれる。 だが、なぜ急にこれをくれたのか、私はよくわからなかった。 仰々しいプレゼントボックスから出てき...
エッセイ

本を語る時間【誰かの何かを救った本20選】

人と会う時、あまり予定をハシゴすることはしないのだが、今日は珍しく昼と夜に別の集まりの予定が入っていた。 なぜかどちらの集まりでも、「本」の話になった。 若い頃に読んだ本、好きな本、最近読んだ本など、皆が思い思いに本について語る時間が私は好...
エッセイ

【老いについて】長所さえも短所に由来していてショックを受けた話

私は今、36歳だ。 この一年で、驚くほど白髪が増えた。 外見的には日々「老い」を感じているが、考え方や活動の幅と言った側面では、実はあまり老いを感じていなかったりする。 「成長」や「変化」はもちろん感じるし、徹夜はできなくなったが、もともと...
エッセイ

初めて絵画を理解した話【言語としての絵画】

2019年、夏のある日のこと。 私は一人、よく晴れた平日の昼間に美術館に向かっていた。 あべのハルカス美術館で開催されていたギュスターヴ・モロー展を見たかったからだ。 当時の私は、5年ほど続いた暗いトンネルのような闘病生活に、光がさし始める...