タイトルだけで人を魅了する本というのがある。
独特な世界観を表していたり、単純に格好良かったり、音が気持ちよくて思わず読み上げたくなったりする本のタイトル——例えば、フィリップ・K・ディックの『電気羊はアンドロイドの夢を見るか』は有名であり代表例だろう。
タイトルだけが一人歩きをし、他作品のオマージュに使われ、元ネタと知られていないことまである。他にも、『ベロニカは死ぬことにした』『ゴドーを待ちながら』などは使いやすさの点からもよく見る気がする。
オマージュは、知っていると作品を他の角度から楽しむ術を持ててより楽しい。だから古典はなるべく読んでおきたいなと思う。
古典は良いタイトルが多いが、特に古典SFは格好いいタイトルの宝庫だ。
- フィリップ・K・ディック『流れよ我が涙、と警官は言った』
- ジェイムズ・ティプトリー・Jr『たったひとつの冴えたやりかた』
- ジェイムズ・ティプトリー・Jr『愛はさだめ、さだめは死』
- ロバート・A・ハイライン『月は無慈悲な夜の女王』
めちゃくちゃかっこいい……。並んでるだけですごく興奮する。タイトルが格好いいと言うのは、なんだかもうそれだけで素敵だ。語彙力などいらない。
タイトルはまず最初に読む作者の作品だ。読んだ後では意味の捉え方が変わることがある点でも、完成された作品と言える。いわゆる「タイトル回収」というのは、しすぎてもなんだかつくられすぎている感じは出るが、やはりふとした時にやられるとグッとくる。
ちなみに、ここまでに挙げた本にはまだ読めていないものもあるので、まだ新鮮な気持ちでタイトルだけを味わえている。とはいえ、死ぬまでにはぜひ読破したい。
せっかくなので、今日は有名な古典SF以外からも、個人的に好きなタイトルを挙げていきたいと思う。短くシンプルなものはあえて外した。タイトルだけで詩のような美しさがあると感じた既読の本だ。
- ミラン・クンデラ『存在の耐えられない軽さ』
- テッド・チャン『あなたの人生の物語』
- マルセル・プルースト『失われた時を求めて』
- アーネスト・ヘミングウェイ『清潔で、とても明るいところ』
- 村上春樹『神の子どもたちはみな踊る』
- 白石一文『僕のなかの壊れていない部分』
- 寺山修司『血は立ったまま眠っている』
- ヨハン・ヴォルフガング・ファン・ゲーテ『若きウェルテルの悩み』
- J・D・サリンジャー『ライ麦畑でつかまえて』
- ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』
ちょっと書き出していて鳥肌が立ってきた。素敵すぎてニヤニヤしてしまう。
こうして改めて、過去に読んだ本などを見ていると、古典というのはタイトルが良いから一層広まり名作となったのか、名作だからタイトルまで作り込まれていて格好いいのか——そんなどちらとも答えの出ない問いを考え始めてしまう。
私はこういった少し長めの、声に出したいタイプのタイトルが好きだが、人により好みは分かれそうだ。本好きで集まって、「好きな本のタイトル5選」なんてお互いにプレゼンをしたら、趣味趣向が思い切り出て楽しいだろう。
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