ついに今年もクリスマスがやってきた。
街は聖夜ムードに溢れ、SNSではクリスマスマーケットとケーキの写真であふれかえっている。
通勤電車にも「今夜楽しみだね!大好き♡」というLINEを送りあうカップルで溢れている。満員電車がいつも以上に苦しいのは、今夜に期待する皆の熱量のせいだろうか……色んな意味でアツい。
私にとっては特に予定のない平日ではあるが、ソシャゲのクリスマスイペントにいそしみ、職場では同僚の手作りシュトーレンのご相伴にあずかった。十分すぎるほど楽しんでいるといえよう。
欲を言うなら、クリスマスマーケットには行きたかったなと思う。この発言には、「いつか空飛ぶ車が見たい」と言う時の、どこか現実味のない遠い希望を語るような気持ちが半分以上含まれている。
なぜかというと、私はクリスマスマーケットに行ったことがないからだ。
これまで幾度となく結ばれた「クリスマスマーケットに一緒に行こう」という約束が、いまだかって果たされたことがない。
相手が誰であろうが、必ず果たされない。もはやこれは呪いだと思っている。
もしかすると、前世で「リア充爆発しろ!」と言いながらクリスマスマーケットを破壊して回ったりしたのかもしれない。よくないね。ならば、このツケもやむなし。
そんなわけでクリスマスマーケットにあこがれを持つ36歳だが、50歳くらいまでに呪いが解けたらいいなと思う。案外、一度誰とも約束せずに一人で行ってみたら呪いはあっさり解けたりするのかもしれないが、いかんせん人ごみにわざわざ一人で行くというのも面倒だったりする。この時期の浮かれた街の雰囲気も、そしていつも以上に混雑する街も、あまり得意ではないのだ。
とはいえ、20代のころは苦手でしかなかったこの時期も、30代になりいくらか開き直ったせいか苦手意識が薄れてきている。どうせなら楽しむか、とケーキや料理を見繕ったりすることもある。
クリスマスは一年の中でもダントツで、周囲から「幸福とはこれである」「かくあるべし」という圧力が強い日だと思っていた。
しかし人は年々両手に持つものが増えるとは限らないようで、しがらみを捨て、年と共に自由になる側面もあるようだ。
最近では聖夜の圧力は毛ほども感じないし、クリスマスケーキを見ておセンチな気持ちにもなれなくなってしまった。
案外、負の感情というのも、過ぎてみれば「再現性のない過去」として、ある種の愛着ある哀愁を帯びるものかもしれない。
だから今日が良い日であった人も、そこまででもなかった人も、その感情は良くも悪くも今しか感じられないんだと思ってみると、下がる溜飲もあるかもしれない。
何はともあれ、皆が穏やかで楽しいクリスマスと年末を過ごせればいいと思う。
メリークリスマス。