本好きに刺さったTVドラマ

エッセイ

私は、テレビをほとんど見ない。

実家にいた頃は、家族がつけている番組を横から見る程度。朝のニュースを時報がわりにして気まぐれにつけていた以外では、唯一見ていたのが深夜アニメだった。それもリアルタイムで見ることはほとんどなく、録画したものをまとめてみることが多かったし、最近ではすっかりサブスクに代替された。

流行りの俳優も、CMも、ドラマも、何も知らずに生きてきた。

しかしここ数年、職場の先輩・後輩の勧めで、ついにドラマを見始めた。サブスクで見られる作品をいくつか勧められるままに見るうち、すっかりハマりつつある。

私の本の趣味や、好きなアニメやゲームの傾向を知っている人が勧めてくれると、かなりの確率で私の好みに刺さる。

ちなみに、勧められたのは以下のようなラインナップ。

  • 『名建築で昼食を』
  • 『アンナチュラル』
  • 『ベイビーわるきゅーれ』

どれも全く異なる作風だが、どれもめちゃくちゃ面白い。

おすすめを足がかりに色々見てみた結果、野木亜希子さんの脚本と、坂本裕二さんの脚本はどれもこれも好きなことがわかった。

『MIU404』『カルテット』『大豆田とわ子と三人の元夫』もすごく良かった。

こういう情報はとても大事だ。本もドラマも音楽も同じで、足がかりができるとその世界が歩きやすくなる。

アニメ好きや小説好きは、クリエイターがドラマ制作にも関わっている場合もあるので、そういった探し方も良いかもしれない。

私は何もドラマが嫌いだったわけではない。幼い頃は家族で『踊る大捜査線』を見たりしていて好きだった記憶もある。おそらくは最近の脚本家も俳優も何もかもに対して無知だったため、地図なしで歩くような感じで手をつけられていなかっただけなのだ。

おすすめを見て楽しめたらだんだんと好きな作品の傾向がわかり、そうなると自分でも開拓し始める。

自分で開拓して見た中では、最近だと『a Table!』がとても好きだった。文学好き、歴史好きにも刺さりそうだ。

他にも『1122』『獣になれない私たち』や古い作品だと『トリック』なども見たが、古いものから新しいものまで、私はこれまでどれほどの名作を逃してきたのかと思う。

惜しいと感じると同時に、今後出会える良作がまだまだたくさんあると思うとワクワクする。

作中の食事

そしてドラマを見始めで思うのは、作中に出てくる食事のなんと美味しそうなこと。

メロンパンが食べたくなったり、餃子が食べたくなったり、マクガフィンのサブリミナルな効果かはわからないが、魅力的な作中のアイテムが作品世界だけでなく実世界にも影響を与え、確実に私の生活を一時的に変えてしまっている。

こういった影響を受ける作品というのは、ドラマに限らず良い作品だと思う。観客がその世界に没入できているという証左とも言えよう。

アニメや小説でも起こりうるが、ドラマはやはり視覚的な情報が多いので、こうした影響も受けやすいように思う。特に映像作品同士を比べてみても、ドラマに比べアニメはある程度デフォルメされ簡略化された情報の集まりで、逆にいうとオミットされていない情報が確実な意味を持つから伏線や解釈もわかりやすい場合が多い。しかし、ドラマは現実の世界そのままの情報量が視聴者に与えられる。

一時期、仕事の脳疲労がひどかった頃、活字は読めるのに映像作品が全く見れない時があった。アニメはまだ良いのだが、映画やドラマといったものが情報が多すぎて疲れてしまい、1時間も集中して見ることができなかった。

ビジュアルシンカーかどうかといった、各人の情報処理タイプにもよるだろうが、私にとって映像作品はなかなか情報処理にコストがかかるらしい。しかしそうした側面が、作品自体のリアリティー、そして迫力や魅力にも繋がり、視聴者の没入感や一体感に寄与していると言える。

ドラマの魅力に気づき、それを楽しむ時間的・体力的余裕が今はあることが嬉しい。どのような形の作品も楽しめるというのは、本当に豊かだ。そしてそれを共有できる人がいることもありがたい。

本もドラマもアニメも、素晴らしい作品が多すぎて、時間的な余裕はすぐに無くなりそうで嘆かわしい。これは幸せな嘆きだ。

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